日本の医療文化に深く根付いているのが、「設備が大きく有名な大病院へ行けば安心だ」という盲目的な大病院信仰です。しかし、この心理的依存は、患者と医療従事者の双方に深刻な歪みをもたらしています。
社会医療学的な観点から見ると、軽症患者が大病院へ集中することは、重症患者の治療に専念すべき高度医療スタッフの疲弊を招き、最前線の当直医のバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こす直接要因となります。患者側にとっても、半日以上を移動と待合室で浪費し、高額な選定療養費を徴収された末に「異常なし、かかりつけ医へ行ってください」と告げられるのは、時間的・経済的・精神的に大きな損失です。
現代の医療は、高度な医療機器を駆使して難病を制圧する「病院完結型」から、地域全体で患者を支える「地域完結型」へと完全にシフトしています。普段の健康管理や初期診療は近隣のクリニックが担い、専門的な精密検査や手術が必要になった際にのみ大病院の高度機能を利用する――このバウンダリー(境界線)を患者側が正しく理解することが、医療崩壊を防ぎ、自身が最良の医療サービスを享受するための防壁となります。