舞台を降りた際の彼は、気さくで温厚、そして無類の城郭好きとしても知られていた。楽屋を訪れる若手俳優やスタッフに対しても常に敬意を払い、芝居の歴史や構造について目を輝かせながら語る姿が多くの人々の記憶に残っている。関係者の一人は「どんなに体調が苦しい時でも、舞台裏では周囲を気遣う笑顔を絶やさなかった。役者である前に、誠実な人間であろうとした人だった」と述懐する。
その高潔な魂と芸の真髄は、長男である坂東巳之助へと脈々と受け継がれている。父の背中を追い、古典の大役に次々と挑む巳之助の舞台姿に、往年のファンの胸は熱くなる。型を徹底的に身体へ叩き込みながら、自身の感性で新たな息吹を吹き込むその姿は、大和屋の芸が現在進行形で生き続けている証左だ。