かつて昭和の日本映画界を席巻したヤクザ映画といえば、仁義や情に厚い男たちの生き様を描く任侠路線が主流だった。しかし、本作はそのフォーマットを根底から粉砕する。主人公を含め、画面に映し出される主要人物のほぼ全員が保身と欲望に狂った悪党。義理も人情もなく、あるのは冷酷な損得勘定と裏切りだけだ。
主演を務めたビートたけし演じる大友は、組織の理不尽な命令に振り回される「苦労人の中間管理職」としての悲哀をも漂わせる。従来のバイオレンス映画であれば悲劇のヒーローとして描かれる場面でも、冷徹な暴力とシュールな間(ま)が同居する。観客は恐怖と笑いの間を行き来させられ、気づけばその独特の世界観から抜け出せなくなるのだ。