時代の流れは容赦ない。現在の鉄道車両の多くは、視認性とメンテナンス性に優れたLED表示器を採用している。かつて主流だった「方向幕」は、文字通りロール状の布やフィルムに駅名を印刷し、モーターで巻き取る物理的な仕組みだった。快速から普通へ、東京から熱海へ。幕が回転するたびに、一瞬だけ現れる珍しい行き先や種別の組み合わせに、私たちは胸を躍らせたものだ。
実物が引退していく一方で、インターネット上では奇妙な逆転現象が起きている。デジタル技術によって、あの「巻き取る質感」が驚くほどの精度で再現されているのだ。スマートフォンの画面をスワイプするだけで、小気味よいモーター音とともに幕が回り出す。物理的な制約から解放されたデジタル空間で、消え去ったはずの昭和の風景が鮮やかによみがえる。