2014年12月に理化学研究所(理研)を退職して以降、彼女は激しいメディアスクラムとバッシングから身を隠すように療養生活へ入りました。社会的な沈黙を破ったのは、退職から約1年1か月が経過した2016年1月、講談社から上梓された手記『あの日』でした。
同書は発売直後から大きな反響を呼び、累計発行部数は26万部を超えるベストセラーを記録しました。手記の中で彼女は、研究不正と断定された実験プロセスに対する自身の見解、理研内部の権力闘争、共同研究者であった故・笹井芳樹氏への追悼、そしてメディアに追い詰められていく精神的崩壊の淵を赤裸々に綴っています。「社会に対する謝罪の言葉を述べつつも、研究者としての意図的な捏造は否定する」という彼女の主張は、世論を再び二分する激しい議論を巻き起こしました。
手記出版に伴う印税収入は相当額に上ったと推測されますが、彼女はそれを元手に派手な生活を送ることはなく、生活の再建と精神的な回復に長い時間を費やすことになります。