現場周辺の緊迫感は異例のレベルに達していた。関係者の取材によると、大の里泰輝は取組の際、相手力士の押しに対抗して残した瞬間、右膝に強い負荷がかかったという。支度部屋へ戻る足取りには明らかに引きずる様子が見られ、すぐにトレーナーとドクターが駆けつける事態となった。
病院での精密検査の結果、右膝の靱帯損傷および軟骨の損傷が確認された。医師から言い渡された全治期間は約4週間から6週間。急激な体重移動と強烈な圧力がかかる相撲の特性上、痛みを抱えたままの出場継続は「競技生命に関わる悪化を招く」との強い忠告があったとされる。
「本人は最後まで土俵に上がり続ける意向を強く示していたが、将来ある身体を優先すべきだと説得した」。ある部屋関係者は沈痛な面持ちで語る。不屈の精神を持つ若き大関にとって、この無念の決断は苦渋の選択以外の何物でもなかった。