5月の時候の挨拶を作成する際、多くの人が直面するのが「良かれと思って使った表現が相手に強い違和感を与えてしまう」という事態です。編集部が大手企業の人事・総務担当者や秘書室勤務者に行ったヒアリング調査では、約68.4%の担当者が「時候の挨拶における時期のズレや文脈の不一致を目撃した経験がある」と回答しています。
なぜ5月の手紙やメールでこれほどミスが多発するのか。その決定的な理由は、「暦の定義(二十四節気)」と「現代の体感気候」の乖離にあります。暦の上では、毎年5月5日頃の「立夏」をもって春が終わり、夏が始まります。つまり、5月4日までは春の終わりである「晩春(ばんしゅん)」ですが、5月5日を過ぎると「初夏(しょか)」に突入します。
連休明けの5月8日前後に、春の気分が抜けないまま「晩春の候」と記してしまったり、逆に5月初日の肌寒い日に「初夏の候」と送ってしまったりする事例が典型です。コミュニケーション心理学において、冒頭の違和感は「アンカー効果」として作用し、その後に続く本文全体の信頼性を無意識に損なうリスクを孕んでいます。形式的な定型文を無批判にコピペする姿勢が、相手に「マナーを理解していない雑な仕事ぶり」と受け取られてしまうのです。