死亡説の背後にある「事故」というキーワードを追うと、映画史に残る緊迫した現場のリアリティに突き当たります。『トランスポーター』関連俳優たちが体験した、作り話ではない本物の撮影事故を検証します。
ステイサム死亡説の最大の燃料となったのが、2014年公開の映画『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』のブルガリアロケで起きた戦慄のアクシデントです。共演者のシルヴェスター・スタローンが海外テレビ特番やプレミア会見で語った証言によると、ステイサムが運転する3トントラックの油圧ブレーキが突然故障。トラックは制御不能のままドックから水深約18メートルの極寒の黒海へと真っ逆さまに転落しました。
「普通の人間なら、重いブーツと銃火器を身につけたまま海底に沈んで溺死していただろう」とスタローンが息を呑んで振り返った通り、絶体絶命の危機でした。しかし、ステイサムは俳優になる以前、水泳飛び込み競技のイギリス代表チームに10年以上在籍し、1990年のコモンウェルスゲームズにも出場したトップアスリートでした。水中でパニックに陥ることなく、即座に開いていたトラックの窓から抜け出し、自力で水面まで泳ぎ切って生還したのです。この奇跡的なサバイバル劇が後年、「ステイサムが海に転落して溺死した」という尾ひれのついたデマへ歪曲されました。
一方、ドラマ版『トランスポーター ザ・シリーズ』でフランク役を演じたクリス・ヴァンスも、まさに命懸けの現場を経験しています。激しい格闘とカーチェイスを売りにしたシーズン1の撮影中、ヴァンスはスタントアクションの最中に重傷を負って緊急搬送されました。製作委員会は撮影スケジュールを急遽中断し、完治を待つために制作が数ヶ月にわたって凍結される事態となったのです。幸いにもリハビリを経て現場へ復帰を果たしましたが、こうした「トランスポーター撮影現場での重傷・製作中断事故」の公式報道もまた、記憶の中でステイサムの死亡説と混同される温床となりました。