汚言症(英名:Coprolalia / コプロラリア)とは、医学的に「本人の意図に反して、社会的にタブーとされる卑猥語、罵倒語、排泄に関わる言葉などを不随意に発してしまう症状」を指します。語源はギリシャ語の「kopros(糞・汚物)」と「lalia(話すこと)」に由来し、古くから神経学の領域で研究されてきました。
日常の会話で感情的になって発する暴言と、汚言症による発声には決定的な違いがあります。それは「自分の意思でコントロールできない(不随意である)」という点です。心の中では「絶対に言ってはいけない」と激しく拒絶しているにもかかわらず、まるでくしゃみやしゃっくりが出るかのように、意図しない言葉が口から飛び出してしまいます。
医学的な位置づけを整理すると、汚言症は単独の病名ではなく、神経発達症群に分類される「チック症」の中の「音声チック」、さらにその中でも高度な「複雑音声チック」の一症状に分類されます。複数の運動チック(まばたき、首振りなど)と1つ以上の音声チックが1年以上持続する状態を「トゥレット症候群(トゥレット症)」と呼びますが、汚言症はその代表的な重症症状として知られています。
世間一般では「トゥレット症候群の人は全員が暴言を吐く」といった極端なイメージを持たれがちですが、統計データが示す通り、汚言症を伴うのは患者全体の1割から2割程度にとどまります。この認知のズレが、当事者に対する偏見を無用に拡大させる要因となっています。