マスク氏の富を爆発的に増やした主因は、2018年にテスラ株主総会で可決された前例のない「役員報酬プラン」にあります。このプランは、基本給をゼロとする代わりに、テスラの時価総額が500億ドルから段階的に6,500億ドル(約100兆円)に達し、売上高やEBITDAの目標をクリアするごとに、テスラ株を格安で購入できるストックオプションが付与される設計でした。
導入当時、ウォール街のアナリストの多くは「達成不可能な無謀な目標」と一笑に付しました。しかしテスラは世界的なEVシフトを牽引して目標を全クリし、報酬プランの総額は約560億ドル(当時の為替で約8兆円超)という史上最高額に膨れ上がりました。
この巨額報酬をめぐっては波乱が起きました。一部の個人株主が「取締役会の独立性が欠如しており、不当に巨額すぎる」として提訴。2026年1月、米デラウェア州裁判所が報酬プランを「無効」とする異例の判決を下しました。しかしテスラ側は本社所在地をテキサス州へ移転する手続きを進めるとともに、2026年半ばの株主総会で同報酬プランを再度決議にかけ、圧倒的多数の支持を得て再承認を勝ち取りました。市場と株主は、マスク氏の強烈なリーダーシップに対する対価として、この天文学的な報酬を正当と認めた形です。