かつての昭和芸能界や初期のテレビドラマ時代には、「悪役を演じた俳優が街中で石を投げられた」「本人の性格もキツいのではないかと誤解された」といったエピソードが実在しました。しかし、現代の映像制作現場においてこの見方は完全に否定されています。
演劇論および心理学の見地から言えば、人を傷つける演技を的確にこなすためには、「他者がどこを突かれたら最も痛烈なダメージを受けるか」を客観的に理解する高度な共感性と人間観察力が不可欠です。本質的に無神経で自己中心的な人間には、計算された悪意をドラマチックに表現することはできません。
また、悪役女優の現在と経歴を追うと、多くの女優が下積み時代に多様な役柄を経験し、挫折や苦労を乗り越えてきたバックボーンを持っています。彼女たちは「自分自身」と「演じるキャラクター」の間に明確な「心理的バウンダリー(境界線)」を引いており、だからこそ役に溺れることなく、冷徹な悪女をアートとして完璧にコントロールできるのです。