オーストラリア統計局(ABS)が発表した国勢調査および最新の社会動態データを分析すると、この国が単一の「英語圏」という枠組みには収まらない現実が浮き彫りになります。オーストラリア言語2026年最新の統計指標において、全人口のおよそ22〜25%が「家庭内では英語以外の言語を話している」と回答しています。大都市シドニーやメルボルンの特定地域では、その比率は40%近くに達します。
家庭内で使用される言語の上位には、中国語(普通話・広東語)、アラビア語、ベトナム語、イタリア語、パンジャブ語などが並びます。アジア・中東地域からの高度人材移民の流入が加速したことで、街頭の案内表示や公共機関のパンフレット、銀行のATM画面には英語と並んで多言語が常時表示される構造が定着しました。これこそが、世界屈指のオーストラリア多言語社会が織りなす日常風景です。
さらに見過ごしてはならないのが、ヨーロッパ入植以前から大陸に根づいていたオーストラリア先住民族言語の存在です。入植当時は250以上の言語と数百の言語変種(方言)が存在していましたが、同化政策などの歴史的暴力により、その大半が消滅の危機に瀕しました。現在も日常的に話されている先住民族言語は約120言語に留まり、そのうち完全に活発な言語はごくわずかです。連邦政府と各教育機関は現在、言語再生プログラムや先住民族言語の学校教育導入を国家プロジェクトとして推進しており、カンガルー(Kangaroo)やディジュリドゥ(Didgeridoo)、コアラ(Koala)といった先住民言語由来の語彙は、すでに現代英語の欠かせない一部として世界中に浸透しています。