少年A(酒鬼薔薇聖斗)が逮捕された後、最大の焦点となったのは「なぜ極めて凄惨な犯行に及んだのか」という動機の解明であった。送致された医療少年院における精神鑑定と調査の中で、幼少期からの小動物虐殺のエスカレーションや、死そのものへの歪んだ執着、解離的な心理状態が次々と浮き彫りになっていく。
この事件は、従来の学説を刷新する契機として犯罪心理学の領域にも強烈な衝撃を与えた。残虐行為の裏に潜むサディズムや誇大自己感、家族関係の歪みといった複合的要因の分析は、その後の異常犯罪捜査における重要なプロファイリング基盤を形作ることになる。だが同時に、心理学者や精神鑑定医の間でも犯行抑止の可能性を巡って激しい議論が交わされ、完全な治療的矯正が可能か否かという根源的な命題は今なお重く横たわっている。