メチルフェニデートを主成分とする代表的な医薬品には、「コンサータ」と「リタリン」が存在します。同じ有効成分を含みながらも、両者は医療現場における位置づけ、体内への薬物放出スピード、そして法的な適応疾患がまったく異なります。
かつて日本でも広く処方されていた「リタリン(即放錠)」は、服用後およそ30分から1時間で急激に血中濃度がピークに達し、効果持続時間はわずか3〜4時間程度にとどまります。この「急激な血中濃度の上昇と下降」が脳の報酬系に強烈な快感をもたらしやすく、2000年代初頭には精神科クリニックでの過剰処方やネット売買を通じた深刻な乱用・依存症が社会問題へと発展しました。その結果、厚生労働省の厳格な指導により、2007年以降リタリンの適応症からうつ病が完全に除外され、現在は難治性のナルコレプシー治療に限定して流通しています。
これに対し、ADHD治療の主流となっている「コンサータ(徐放錠)」は、特殊な浸透圧放出制御システム(OROSテクノロジー)を採用した錠剤です。服用すると外層のメチルフェニデートが速やかに溶け出して初期効果を発揮した後、内部の浸透圧エンジンが水分を吸収して膨張し、微細なレーザー孔から有効成分を約12時間にわたって一定のスピードで押し出し続けます。これにより、1日1回の朝の服薬で日中の活動時間帯をカバーしつつ、血中濃度の急激なスパイク(突出)を防ぐことで依存形成のリスクを大幅に抑制しています。
両製剤および代表的なADHD治療薬の構造的な違いを整理したデータは以下の通りです。
日経メディカル処方薬事典や医療保険制度の試算によると、メチルフェニデートの薬価はコンサータ18mg錠で約340円、27mg錠で約380円、36mg錠で約410円前後で推移しています。健康保険の3割負担を適用した場合、30日分の薬剤費は自己負担で約3,000円〜4,000円程度(診察料・調剤料別)となります。自立支援医療(精神通院医療)制度の適用を受けた場合は1割負担となるため、長期的に継続治療を行う患者の経済的負担は大幅に軽減されます。