離婚から7年の歳月が流れた2011年、日本中を驚愕させるニュースが駆け巡ります。西原理恵子の人気漫画を実写映画化した『毎日かあさん』において、小泉今日子と永瀬正敏が夫婦役として共演することが発表されたのです。
離婚した元夫婦が、スクリーンの中で再び「夫婦」を演じる。日本の映画界では前代未聞の試みに対し、当初は好奇の目が向けられました。しかし、完成した作品を観た観客と批評家は、その圧倒的な完成度に息を呑むことになります。
小泉今日子が演じた漫画家の母と、永瀬正敏が演じた元戦場カメラマンでアルコール依存症の夫。病魔と闘いながら家族の絆を紡ぎ直そうとする役柄において、2人が共有してきた9年間の歳月と別離の歴史が、演技に計り知れないリアリティと深みを与えていました。永瀬正敏は役作りのために過酷な減量を敢行し、小泉今日子はそれを女優として、かつて生活を共にした人間として正面から受け止めたのです。
公開当時の合同記者会見やインタビューで、小泉今日子は「元夫だからこそ、信頼してすべてを委ねることができた」と語り、永瀬正敏も「相手が小泉さんでなければ、この役を引き受けられなかった」と吐露しています。この完璧な空気感と親密な様子から、当時は「奇跡の復縁ではないか」とメディアで騒がれました。
しかし、取材班が掴んだ真相は、安易な恋愛感情への回帰ではありませんでした。2人は「男女のよりを戻した」のではなく、夫婦という契約を脱ぎ捨てたからこそ到達できた、「絶対に裏切らないクリエイティブの盟友」という境地に立っていたのです。復縁という矮小な枠組みに収まることのない絶対的な信頼が、あのスクリーンには刻まれていました。