田中角栄の人間関係論を象徴する代表的な言葉が、「恩は石に刻め、情けは水に流せ」です。他人に受けた恩義は決して忘れず石に刻み込むように心に留め、逆に自分が施した情けや親切は水に流して恩着せがましくするな、という戒めです。
人間関係がこじれる最大の原因は「これだけやってあげたのに」という見返りの期待にあります。角栄はこの心理を熟知しており、自らは徹底して相手に貸しを作った感覚を持たせない振る舞いを貫きました。
さらに金銭感覚に関しても、角栄は極めてシビアな哲学を持っていました。それが「借りた金は忘れるな、貸した金は忘れろ」という教えです。金銭の貸し借りは信用の根幹であり、借りた側は相手が忘れていても律儀に返す誠意が必要である一方、貸した側はそれを執着せず忘れるくらいの度量を持てという教訓です。こうした筋の通し方が、政界内外での絶大な信頼関係を築き上げました。