溶接時に発生するアーク光には、極めて強力な紫外線(UV-BおよびUV-C領域)が含まれています。この光線が保護具なしで眼球に入ると、黒目の表面を覆う「角膜上皮細胞」に吸収され、細胞のタンパク質やDNAに深刻なダメージを与えます。
ここで多くの人が疑問に感じるのが、「作業中や直後には全く痛まず、決まって就寝中や夜中に激痛が起きる」という時間差の現象です。この原因は角膜の構造と代謝メカニズムにあります。
光線を浴びた直後、角膜上皮細胞は損傷を受けますが、即座に剥がれ落ちるわけではありません。紫外線の刺激によって細胞死(アポトーシス)が進行し、細胞が変性してポロポロと剥離するまでにおよそ6〜12時間の潜伏期間を要します。夜間、睡眠中やリラックスしているタイミングでちょうど角膜上皮が一斉に脱落し、その直下に走る無数の三叉神経(知覚神経)が外気にむき出しとなります。その結果、目を開けても閉じても針で刺されるような激痛が走り、生体防御反応として溶接光による充血と涙が止まらない症状が一気に噴き出すのです。