「東京湾で潮干狩りといえば数千円の入場料がかかるのが当たり前」というイメージを持つ方にとって、葛西の浜が完全にタダで開放されている事実は俄かには信じがたいかもしれません。しかし、葛西臨海公園の潮干狩りにおける無料の真相は、この土地が持つ公的な管理体制と生態系の成り立ちにあります。
一般的に千葉県や神奈川県で見られる有料潮干狩り場は、地元の漁業協同組合が管理する漁場であり、シーズン前にトラック数台分のアサリを人工的に撒き入れ(放流)、入場料や貝の重量課金によってその費用を回収するビジネスモデルです。一方、葛西で潮干狩りができるエリアは、葛西臨海公園の南側に位置する「東京都立葛西海浜公園」の西なぎさと呼ばれる都有の公立干潟です。ここは漁業権が設定されておらず、東京都港湾局が都民の親水空間として無償開放しているため、入園料も採取料も一切徴収されません。
ただし、無料であることには明確なトレードオフが存在します。人の手による貝の放流が一切行われない正真正銘の天然干潟であるため、有料施設のように「砂を軽く手で払うだけでアサリがゴロゴロ出てくる」という状況は期待できません。潮の引き具合、海底の地質、そして貝の生息ポイントを的確に見極めなければ、何時間掘っても収穫ゼロという厳しい現実が待ち受けています。