スクリーンに現れた瞬間、空気が一変する。彼の演技には、日本の劇評家や映画ファンを長年魅了してきた「軽やかさ」と「危険な香り」が同居している。緊張感あふれるシリアスな対峙であってもフッと肩の力を抜き、観客の予想を裏切るタイミングで台詞を投げかける。その立ち振る舞いはまるでジャズの即興演奏だ。
年齢を重ねた現在の佇まいには、渋みと奥行きがさらに加わった。刻まれた目元のシワひとつひとつが役柄の生きてきた年月を無言で物語り、沈黙の中にすら濃密なドラマを立ち出させる。型にはまらない自由奔放さと、極限まで計算されたプロフェッショナルな美学。この二面性こそが、今なお第一線の現場で彼が熱望され続ける最大の理由だろう。