日常パートでは視聴者のヘイトを集めやすい鳩ヶ谷夫妻ですが、彼らを単なる「不快な寄生虫」と決めつけるのは早計です。劇場版シリーズにおける彼らの立ち位置を検証すると、テレビシリーズとは異なる本質的な人間性が浮かび上がってきます。
その筆頭が、名作として名高い2001年公開の映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』です。劇中、大人たちが「20世紀博」の匂いに誘惑されて洗脳される中、ヨシりんとミッチーは持ち前のバカップルぶりを発揮して洗脳に一定の耐性を見せ、しんのすけたちカスカベ防衛隊を自家用車に乗せて決死の逃走劇をアシストしました。追っ手から逃れるために車を激しく損傷させながらも、子供たちを守るためにハンドルを握り続けた姿は、普段の身勝手さからは想像もつかない英雄的な活躍でした。
また、2006年公開の『伝説を呼ぶ 踊れ! アミーゴ!』などでも、周囲の人間が次々と偽物にすり替わる恐怖の中で野原家にいち早く異常を知らせるなど、「非常時には純粋な善意と行動力を発揮する」という隠れた美点を持っています。
さらにネット上では「ヨシりんはひろしを利用しているだけ」という言説も見られますが、これも誤解です。ヨシりんは本気でひろしを男として尊敬しており、父性のロールモデルとして頼りにしています。浮気や不倫が横行する現代の世相において、お互いに対して一切の浮気心がなく、純粋無垢な一途さでお互いを愛し続けている点においては、ある意味で究極の純愛を体現している夫婦とも評価できます。
【プロの結論】ミッチー&ヨシりん回を楽しめる層とストレスを感じる層の分岐点
鳩ヶ谷夫妻が登場するエピソードを楽しめるか否かは、視聴者がアニメ『クレヨンしんちゃん』に求めるスタンスによって明確に分かれます。
【楽しめる人の特徴】
不条理劇やドタバタコメディとして割り切れる人。ひろしとみさえが理不尽な目に遭いながらも鋭利なツッコミを炸裂させる「様式美」を好む層や、現実離れしたバカップルの奇行を純粋なエンタメとして笑い飛ばせる視聴者には、これ以上ない極上のスパイスとなります。
【ストレスを感じやすい人の特徴】
日常のリアリティや道徳的正しさを重視する人。パーソナルスペースを侵食されることへの嫌悪感が強い人や、近隣トラブル・無遠慮な親戚に悩まされた実体験を持つ大人の視聴者にとっては、彼らの行動がトラウマや苛立ちを刺激する要因となってしまいます。