医療従事者の間では、血管収縮薬性鼻炎はしばしば「点鼻薬依存症」とも呼ばれます。麻薬のような中枢神経性の依存物質が含まれているわけではありませんが、「スプレーが手元にないと呼吸ができなくなる」という強烈な恐怖感が、心理的・行動的な依存を形成するためです。大手掲示板やSNS、知恵袋などに寄せられる当事者の告白からは、その深刻な生活実態が浮き彫りになっています。
「外出時にスプレーを忘れたことに気づいた瞬間、冷や汗が出てパニックになり、目的地の最寄り駅にあるドラッグストアへ駆け込んで新しいナザールを購入した」
「枕元に置いておかないと、夜中に両鼻が完全に詰まって窒息しそうになり飛び起きる。毎晩2時間おきに目を覚まして点鼻している」
「口呼吸しかできず、起床時は喉がカラカラで血の味がする。食事の味もせず、常に頭が重くて集中力が続かない」
取材した耳鼻咽喉科専門医によると、受診者のなかには自宅、職場、車内、カバンの中に合計5〜6本のナザールを分散配備し、1本(30ml)をわずか3〜4日で使い切る重度の依存症例も珍しくないといいます。鼻腔粘膜が完全に肥厚してしまうと、スプレーの薬剤自体が奥まで届かなくなり、噴霧しても液が手前から垂れ流れるだけで一向に通らないという八方ふさがりの状態に追い込まれます。