Google検索やSNSにおいて、「でんでらりゅうば」の後に「怖い」「遊女」「病気」「間引き」といったキーワードが予測変換として出現する現象は、すでに10年以上にわたって続いています。このでんでらりゅうば 怖い意味にまつわる言説を精査すると、主に以下の2つのパターンに分類されます。
俗説1:長崎・丸山遊郭における「遊女の足抜け」悲話説
もっとも広く拡散されているのが、長崎屈指の花街であった丸山遊郭を舞台にしたでんでらりゅうば 遊女説です。「借金や契約で縛られ、大門から一歩も外に出られない遊女が、客や恋人に対して『ここから逃げ出せるものなら逃げてあなたの元へ行きたいけれど、監視が厳しくて出られないの』と身の上を嘆いた歌である」という筋書きです。一見すると長崎の歴史的背景と合致しているように思えるため、多くのまとめサイトで事実であるかのように転載されました。
俗説2:隔離された伝染病患者・座敷牢説
さらに猟奇的なバリエーションとして、「結核やハンセン病などの伝染病に冒され、座敷牢に隔離された人間が外の世界を恋しがって歌った」「間引きの対象となった子どもを悼む歌」というホラー解釈も存在します。「出ようとしても出られない」「行けない、行けない」という断絶のフレーズが、閉鎖空間の絶望感と結びつけられた結果です。
民俗学と歴史資料が証明する「都市伝説のウソ」
長崎の郷土史料や長崎 わらべうた 歴史を専門とする民俗学の調査報告書において、この歌が遊女の哀歌や隔離牢の歌として記録された一次資料はただの1点も存在しません。
地元・長崎の郷土史家や古老たちの証言によると、この歌は古くから長崎くんちの演目や子ども同士の手遊びとして受け継がれてきたものであり、陰鬱な背景を持つ歌として歌われた記録はありません。長崎市教育委員会や図書館所蔵の風俗史資料でも、単なる方言の言葉遊び(わらべうた)として分類されています。
では、なぜこのような不気味な噂が定着したのでしょうか。認知心理学およびネットフォークロアの観点から分析すると、3つの要因が浮かび上がります。
- 異様な音韻のループによる不気味さ:「でんでらりゅうば」の「でん」「こん」という破裂音の連続は、他県民にとって呪文のように聞こえ、言語的な認知負荷がかかります。この「意味がすぐには分からない不気味さ」が、オカルト的な想像力を刺激しました。
- 「カゴメカゴメ」「通りゃんせ」と同列のホラー消費:1990年代後半から2000年代にかけて、日本のインターネット上では「童謡の本当は怖い意味」というジャンルが大ブームとなりました。無邪気な童謡に裏のグロテスクな意味を見出すネットミームの潮流に、「でんでらりゅうば」も巻き込まれた形です。
- 長崎の歴史との安易な結びつけ:出島による閉鎖的な管理社会や丸山遊郭という実在の歴史遺産が存在するため、「監禁」「出られない」という歌詞がリアルな悲劇として結びつけやすかったという構造的背景があります。