林家正蔵を語る上で欠かせないのが、前名である「林家こぶ平」時代の圧倒的なお茶の間知名度です。初代林家三平の長男として生まれた彼は、1978年に実父へ入門。父の急逝後は叔父である林家三木助、のちに八代目林家正蔵(後の彦六)門下で薫陶を受け、1987年には24歳の若さで当時の最年少真打昇進を果たしました。
1980年代から1990年代にかけては、テレビタレントとしてバラエティ番組を席巻。国民的アニメ『タッチ』の松平孝太郎役など、声優としても唯一無二の存在感を発揮しました。『笑点』の演芸コーナーや特別企画にも頻繁に登場し、お茶の間では「愛されキャラ」の地位を不動のものとします。
しかし、2005年3月の「九代目林家正蔵」襲名は、彼の落語人生における最大の転換点となりました。林家正蔵は、江戸時代から続く落語界屈指の「留め名(止め名)」です。祖父である七代目正蔵ゆかりの名跡を取り戻す形となったこの襲名劇の背景には、海老名家の名門としての復興という悲願がありました。一方で、大パレードを伴う大規模な襲名披露に対しては、当時メディアや一部の落語ファンから「知名度先行ではないか」という厳しい批判が浴びせられたのも事実です。