南米のO型偏重と対極をなす現象が、インドや中央アジア一帯におけるB型割合の高さです。世界平均で16〜20%程度しか存在しないB型ですが、インド北部やパキスタン、バングラデシュ周辺では40%前後を叩き出し、国内最多の座を占めています。
インドでB型が生き残った背景には、ガンジス川流域などで歴史的に繰り返されてきたコレラとマラリアの猛威があります。近年の熱帯医学および疫学調査において、O型の人間はコレラ毒素に対する腸管細胞の感受性が高く、脱水症状で急速に死に至るリスクが他型より高いことが判明しています。これに対し、B型はコレラに感染しても重症化を免れる確率が高い特性を持っています。
また、熱帯熱マラリアに対しても、B型やO型は重症化の指標となる「ロゼット形成(感染赤血球が非感染赤血球と塊を作る現象)」を起こしにくく、生存率を高めました。劣悪な水環境と疫病の蔓延という極限状態において、コレラに弱いO型が間引かれ、B型遺伝子を持つ人々が圧倒的優位に立って子孫を残した結果が、現在の「インド=B型大国」を形成しました。
もう一つの国際的な医療格差として見逃せないのがRhマイナス(Rh-)の世界割合です。
日本人におけるRh-の割合はわずか約0.5%(200人に1人)という極めて稀少な存在です。しかし、コーカソイド(欧米白人)では全人口の約15%、特にピレネー山脈周辺に暮らすバスク人コミュニティでは実に25〜35%がRh-を占めています。Rh-の母親がRh+の胎児を妊娠した際に起こる「新生児溶血性疾患」のリスクを考慮すると、なぜこれほど高頻度でRh-が残存したのかは現代人類学でも議論が続いていますが、他民族との混血を拒んできた孤立した歴史的環境が影響していることは間違いありません。