ネット上の相談掲示板やSNS上では、吐かないタイプのつわりに苦しむ妊婦たちの悲痛な叫びが日々投稿されています。つわりで仕事が休めないときの対処法やネットの反応を調査すると、以下のようなリアルな本音が浮き彫りになります。
「トイレに駆け込んで吐いているわけではないから、職場の上司や同僚に辛さを信じてもらえない」
「会議中、ずっと激しい船酔いに耐えながら笑顔を作っているのが地獄のよう」
「家族に『吐かないなら軽いつわりで良かったね』と言われ、心が折れた」
社会心理学的な観点から見ると、日本の職場環境には「目に見える明確な障害(発熱、出血、頻繁な嘔吐)がなければ病気とみなされにくい」という有形病状偏重の傾向が根強く残っています。その結果、本人が「まだ吐いていないから我慢しなければならない」という内面化された規範に縛られ、周囲との間に健全な心理的バウンダリー(境界線)を引けずに限界まで消耗してしまう構造が存在します。
しかし、持続的な悪心は集中力を著しく削ぎ、労働生産性を著しく低下させるだけでなく、母体の交感神経を過度に興奮させて胎盤血流にも悪影響を及ぼしかねません。こうした事態を防ぐため、厚生労働省は「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」の制度を定めています。医師に診断書代わりに記載してもらうことで、事業主に対して時差出勤、休憩時間の延長、作業の制限、さらには休業を法的に請求することが可能です。「吐いていないから書いてもらえない」ということは決してありません。日常生活に支障が出ている旨を率直に主治医へ伝えることが肝要です。