この不思議な現象の謎を科学的に解き明かしたのが、北海道大学大学院の准教授を務める長谷川英祐氏の研究だ。同氏の研究チームは、行動生態学の視点からアリの集団を詳細に観察。その驚くべき成果をまとめた著書『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー刊)は、ビジネス界でも大きな話題を呼んだ。
長谷川氏らの実験によれば、全員が一斉に働き始めると、全員が同時に疲労困憊に陥ってしまうという。もし全員が力尽きたタイミングで卵の世話や天敵への対処が必要になったら、コロニー全体が滅びかねない。だからこそ、普段は反応しにくい「怠け者」が予備勢力として温存され、他が動けなくなった時にバトンを受け継ぐ。一見不効率なシステムが、実は集団の長期的絶滅を防ぐ究極のリスクヘッジだったのだ。