孤島ニューアイランドから世界へと放たれた極秘の使者。その選定において、カイリュー以上の適任はいなかった。第一の理由は、物理的な生存能力だ。ポケモン世界の公式設定において、カイリューは猛烈な荒波や低気圧をものともせず大海原を舞う「海の化身」とされる。劇中で描かれた異常気象は、並の飛行タイプポケモンであれば墜落を免れない過酷な環境だ。この極限状態を難なく突破してサトシのもとへ到達できる能力の持ち主は、当時にあってカイリューをおいて他に存在しなかった。
しかし、本当の狙いはそこではない。真の役割は、心理的な威圧にあった。サイコキネシスによって自我を封じられ、虚ろな瞳で佇むカイリューの姿は、「優しきドラゴン」という一般的なイメージとの恐ろしいギャップを生み出した。圧倒的な力を持つポケモンさえも無力な手先へと変えてしまう。ミュウツーは招待状を届けるという行為そのものを通じて、自らの絶対的な支配力と知能の高さを、戦う前からトレーナーたちへ見せつけていたのだ。2026年現在の最新考察でも、このシーケンスこそが作品全体の心理的緊迫感を決定づけた傑作の演出として高く評価されている。