全国のガソリンスタンドにおいてセルフ方式の割合は8割を突破しており、燃料の選定・注入責任は完全にドライバー個人の手に委ねられています。JAF(日本自動車連盟)が公表する救援出動データによると、燃料の給油間違いによる救援要請は全国で年間数千件規模に上り、繁忙期の12月から1月にかけて相談が急増します。
現場のセルフスタンドを取材すると、給油ノズルの配置や色分け(赤:レギュラー、黄:ハイオク、緑:軽油、青:灯油)による安全策は確立されているものの、人間の心理的エラーを完全に遮断できていない実情が浮かび上がります。
ネット上のコミュニティや相談掲示板では、次のような生々しい当事者の声が散見されます。
「深夜、疲れ切って帰宅する途中で給油した際、頭では灯油ポリタンクに入れるつもりだったのに、ノズルを手にとって車に入れてしまった」
「実家の親が、ガソリン携行缶に余っていた液体を『灯油の残りだ』と思い込み、ストーブのカートリッジタンクに補充してしまい小火を出しかけた」
こうした事象の根底には、慣れた作業ほど無意識に手を動かしてしまう「オートパイロット状態」や、「自分だけは間違えない」と思い込む正常性バイアスが横たわっています。冬場のスタンドでは、自動車用の給油レーンと灯油販売コーナーが意図的に離れて設置されていますが、容器を持参して購入する過程において「車内への積み込み」「自宅ガレージでの保管」という複数の移動ステップを踏む間に、ラベリングや確認作業が欠落してしまうのです。