2人の出会いは2006年に遡ります。夏木マリが自身の音楽表現としてブルースバンドを結成する際、サウンドプロデューサーとして声をかけたのが斉藤ノヴでした。リハーサルやセッションを重ねるなかで互いの感性が強く共鳴し、2007年には交際へと発展します。
交際発覚当時、夏木マリは「籍を入れるつもりはない。形式にとらわれないフランス婚(事実婚)でいく」と堂々と宣言し、世間を驚かせました。大人として完全に経済的・精神的な自立を果たした2人だからこそ、法的な契約に縛られず、純粋な愛と信頼のみで結ばれる関係を選んだのです。
しかし、その強固なポリシーを覆す大きな転機が訪れます。それが2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。報道各社のインタビューや自著で明かされたところによると、未曾有の危機に直面した際、2人は「生命の有限性」と「社会的な家族のあり方」を深く見つめ直したといいます。
「万が一の事態が起きたとき、法律上の家族でなければ病院に駆けつけても病室に入れないかもしれない」「責任を持って最後まで寄り添う覚悟を、公の形にしておくべきではないか」――。単なる気まぐれではなく、不測の事態において互いを守り抜くための現実的な防衛策として、夏木マリは59歳の誕生日直前となる2011年5月に入籍を決断したのです。