鳥貴族の札幌進出を阻んでいる最大の原因は、ブランドの生命線ともいえる「高鮮度の国産鶏肉100%使用」という調達方針と、青函トンネルを越えるチルド物流のコスト構造にあります。
鳥貴族は、冷凍肉を使わずに鮮度を保ったまま各店舗へチルド配送し、店舗スタッフが1本ずつ丁寧に串打ちを行うオペレーションを最大の強みとしてきました。このモデルを維持するためには、加工拠点から数時間圏内に店舗網が密集している必要があります。しかし、本州の主要工場から北海道へチルド輸送する場合、津軽海峡を越える長距離輸送が必須となり、リードタイムと輸送費用が跳ね上がります。
物流業界における2024年問題以降、ドライバーの労働時間規制や燃料費高騰によって、長距離幹線輸送のコストは年々増加傾向にあります。均一価格による高い原価率(約30%台後半)を設定している鳥貴族にとって、この「北海道の壁」とも呼ばれる追加物流コストは、全品均一というビジネスの根底を揺るがしかねないリスクとなります。
また、鳥貴族が出店を行う際は、物流効率を最大化するために特定エリアへ短期間で複数店を集中させる「ドミナント戦略」を採用します。札幌に1店舗だけを開業しても物流費を吸収できないため、進出するならば初年度から札幌市内に5〜10店舗規模の同時展開、あるいは自前のセントラルキッチンや提携加工場の確保が求められます。この初期投資の重さが、未だに北海道進出のゴーサインが出ない最大の理由です。