軍部による厳重な報道規制により、韓国内では「光州で暴動が発生した」という偏頗な情報しか流されなかった。封鎖された市内の凄惨な実状を世界に知らしめたのは、一人のドイツ人ジャーナリストの執念だった。ドイツ第一公視(ARD)の特派員ユルゲン・ヒンツペーターである。
彼はソウルのタクシー運転手の協力を得て検問を突破し、死線を超えて光州市内に潜入した。実弾が飛び交う市街地でカメラを回し続け、軍による市民殺戮の決定的な証拠を記録。そのフィルムをクッキーの缶に隠して極秘裏に国外へ持ち出し、世界中へと打ち電した。この命懸けの取材劇は、後に大ヒットを記録した映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』として映像化され、封印されかけた歴史の真実を世界中に知らしめる契機となった。