北国の城下町、青森県弘前市。この地に代々伝わる名物「うちわ餅」には、知られざる歴史のレイヤーが存在する。竹串の先に平たく伸ばした餅を刺し、団扇(うちわ)の形に見立てたのがその名の由来だ。かつて城下で暮らす武士や市井の人々の腹を満たしたファストフードとしての側面を持ちながら、時代の波を越えて磨き抜かれてきた。
その伝統を今に伝える象徴的な存在が「戸田うちわ餅店」である。創業以来を守り続ける秘伝のごまダレは、まさに店主の執念が生み出した芸術品と言っていい。じっくり煎り上げた胡麻を擦り潰し、醤油や砂糖と絶妙なバランスで配合。粘度とツヤ、そして奥深いコクを出す工程は、決して機械化できない職人の感性に依存している。