90年代が「セル画黄金期」と称される最大の理由は、フィルム撮影特有の粒子感、職人の筆致が残る有機的なセル画の陰影、そしてリミテッドアニメーションの制約を逆手に取った破格のケレン味にあります。セル絵の具の厚みと透過光エフェクトが織りなす独特の温かみは、フラットになりがちな現代のデジタルの画面作りとは一線を画す質感を放っています。
特に目覚ましい発展を遂げたのが90年代アニメのロボット・メカジャンルです。『勇者シリーズ』や『新機動戦記ガンダムW』、『機動戦艦ナデシコ』、さらにはOVA作品である『マクロスプラス』や『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』など、巨大鋼鉄の重量感と緻密なメカディテールを手描きで描き切る職人芸が炸裂しました。爆発煙の広がり方、金属のハイライト、メカの変形シークエンスなど、手描きならではの膨大な作画枚数と情熱が注ぎ込まれています。
また、90年代アニメのバトル・アクション表現は、金田伊功氏や板野一郎氏らが確立した大胆なパースペクティブをベースに、さらにスタイリッシュな洗練を遂げました。『カウボーイビバップ』で見られる映画さながらのガンアクションや武術のリアリティ、あるいは『少女革命ウテナ』のような前衛的かつ演劇的な殺陣など、クリエイターの作家性がダイレクトに画面へ反映されていた時代です。