地方の過疎化と空き家増加は、長年日本が抱えてきた深刻な課題だ。しかし、いま現場で起きているのは、従来の行政主導型ハコモノ事業とは真逆のアプローチである。大規模な商業施設を作る予算も体力もない小さな集落が、既存の民家をそのまま活用して小さな厨房としつらえを整える。それだけで、静かだった村に年間数千人の外来者が訪れる例が後を絶たない。
長野県のある山あいにある集落では、築80年の民家をそのまま利用した取り組みが大きな波紋を呼んでいる。土間に設置された薪ストーブの煙が立ち上るなか、地元の高齢者が自ら育てた無農薬野菜を持ち寄り、調理を担当する。訪れた客は過剰な接客ではなく、「おばあちゃんの普段着の味」と空間の気取らなさを買い求める。そこにあるのは無駄な装飾を削ぎ落とした生活の暖かさそのものだ。