私たちが公的な文書や試験で実際に書くことを求められる漢字の限界はどこにあるのでしょうか。小中学校の教育課程を定めた常用漢字表(2,136字)において、最も画数が多い文字は「鬱」と「鑑」の29画です。
2010年の常用漢字改定以前は「鑑」が単独首位でしたが、メンタルヘルスや文学的表現での使用頻度が高い「鬱」が表内に追加されたことで首位タイとなりました。「鬱」は林・缶・冖・鬯・彡の組み合わせで構成され、試験対策として「リンカーンはアメリカの黒人(鬯)さん(彡)」といった独自の語呂合わせで暗記されるなど、難関漢字の代名詞として定着しています。
さらに高度な漢字検定1級の世界に踏み込むと、画数の壁は一気に跳ね上がります。
- 「麤」(33画・音読み:ソ、訓読み:あらい):「鹿」を3つ並べた文字で、漢検1級配当の最高峰画数。大雑把であることや粗末なことを指します。
- 「籲」(32画・音読み:ユ、訓読み:よぶ):大声で叫び求めることを意味し、「吸吁(きゅうこ)」などの熟語で出題されます。
- 「驫」(30画・音読み:ヒョウ):「馬」を3つ重ね、馬の大群が疾走するさまを表現します。
これらの文字は、単に画数が多いだけでなく、古代の自然観や動物の生態を視覚的にそのまま文字化しようとした漢字本来の象形・会意の成り立ちを如実に物語っています。