インターネット上の掲示板や知恵袋などでは、障害者手帳の申請に対して根拠のないデマや過剰な不安が書き込まれているケースが散見されます。それらの真相を客観的なファクトに基づいて解体します。
最大の誤解は、「手帳を持つと周囲や勤務先にバレるのではないか」「解雇や左遷の理由にされるのではないか」という噂です。身体障害者手帳を取得した事実が、自治体から職場へ直接通知されるルートは一切存在しません。税制上の障害者控除を会社の年末調整で申告した場合は経理担当者に知られる可能性がありますが、これすらも確定申告を個人で税務署に直接提出する形をとれば、会社に知られることは完全に遮断可能です。法的に手帳の所持を会社へ申告する義務もありません。
もう一つの頻出する不安が「生命保険に入れなくなる」という主張です。これについても因果関係の取り違えがあります。保険会社が新規加入を謝絶・制限する理由は「手帳を持っていること」ではなく、「人工透析治療を受けているという重篤な既往歴」そのものです。手帳を申請しようがしまいが、告知義務違反をしない限り、透析導入後に一般の死亡保険や医療保険に無条件で新規加入することは極めて困難です。つまり、手帳の申請が保険加入の可否に影響を与えるわけではありません。
唯一、実質的な選択として慎重な判断が求められるのが「障害者枠雇用」での転職・就職の現場です。手帳を取得すれば、企業の障害者雇用促進法に基づく「障害者枠」での応募が可能になります。この枠は「週3日の透析治療のために午後2時に退社したい」「残業を免除してほしい」といった配慮を得やすい大きなメリットがあります。一方で、現場の生の声として「一般枠に比べて基本給の上限が低く設定されている」「昇進スピードが鈍化しやすい」というシビアな現実が存在することも否定できません。自身のキャリア設計や現職の理解度と照らし合わせ、一般枠のまま勤務を継続するか、配慮を最優先して障害者枠を活用するかを主体的に見極める必要があります。