この現象を技術的・カルチャー的側面から支えた決定打が、「野獣先輩 BB素材」(ブルーバック・グリーンバック切り抜き素材)の爆発的普及です。動画編集ソフトの普及に伴い、有志の手によってコマ送りで切り抜かれた透過素材が無償でネット上にばら撒かれました。これにより、誰もが彼を自由なシチュエーションに配置できる環境が整いました。
3DCGモデルの作成、ボカロ曲のPVへの出演、最新アニメのダンスを踊らせるMAD動画など、ユーザー主導の創作活動によってキャラクターの可塑性は極限まで高まりました。「野獣先輩 ミーム」としてネット文化のOS(基盤)のように機能し、制作者の数だけ異なるパーソナリティが付与されていったのです。
本来は粗野なセリフを吐くキャラクターが、初音ミクのように歌い、VTuberのように愛想を振りまく動画が何百万回も再生される中で、「素材としての親しみやすさ」が「存在そのものの愛嬌」へと錯視されていきました。オープンソース化された集合知が、グロテスクな現実を「愛されるコンテンツ」へと見事に脱臭した証左と言えます。