北朝鮮を支配する金一族の権力構造を理解するうえで不可欠なのが、3代にわたる直系と傍系の関係性です。公式プロパガンダでは「白頭山の偉人たち」として神格化される一方、実際の金正日の家系図は複数の妻と愛人、異母兄弟が複雑に入り乱れる宮廷絵巻そのものです。
建国の父である金日成主席には、正妻の金正淑(キム・ジョンスク)との間に金正日総書記が生まれました。しかし、金日成の後妻である金聖愛(キム・ソンエ)とその息子たち(金平一など)は、後継者争いに敗れた後に「傍系」として徹底的に中枢から排除され、長年にわたり在外公館を転々とする事実上の軟禁生活を強いられました。
さらに複雑を極めたのが金正日氏の私生活です。成恵琳(ソン・ヘリム)との間に生まれた長男・金正男(キム・ジョンナム)氏、金英淑(キム・ヨンスク)との間に生まれた長女・金雪松(キム・ソルソン)氏、そして在日朝鮮人出身の高容姫(コ・ヨンヒ)との間に生まれた金正哲(キム・ジョンチョル)氏、金正恩氏、金与正氏という兄弟姉妹が存在します。金正日氏は権力分散を防ぐため、自らの子どもたちを幼少期から隔離して育て、互いの存在すら詳細には把握させない徹底した秘密主義を貫きました。
この中で最終的に後継の座を射止めたのが、母・高容姫氏の強力な後押しと自身の冷徹な統率力を見せつけた金正恩氏でした。しかし、この複雑な血統の構図こそが、後の熾烈な親族粛清の火種となっていきます。