天童よしみさんのキャリアは、まさに昭和歌謡史そのものです。7歳で素人のど自慢大会に初出場して以来、数々のコンテストで優勝を総なめにし、「のど自慢荒らしの天才少女」として関西一円に名を轟かせました。
プロとしての原点は、1970年(当時15歳)に吉田よしみ名義でレコーディングした人気アニメ『いなかっぺ大将』の挿入歌「大ちゃん数え唄」です。その後、1972年に伝説のオーディション番組『全日本歌謡選手権』で10週連続勝ち抜きを達成し、最年少の7代目チャンピオンに輝いてシングル「風が吹く」で本格的なプロデビューを果たしました。
華々しいスタートを切ったものの、その後の道は決して平坦ではありませんでした。ヒットに恵まれないまま10年を超える不遇の時代が続き、一時は引退も考えるほどの苦境に直面します。その暗闇を支え続けたのが、実の母親である吉田筆子さんでした。
筆子さんはマネージャー、運転手、衣装係、そして精神的支柱として娘を支え、車一台で全国のレコード店や有線放送局を回る過酷なキャンペーンを二人三脚で乗り切りました。自著や手記の中でも「母がいなければ今の私は100%存在しない」と述懐している通り、当時の泥臭い下積みと母娘の絆こそが、現在の揺るぎない歌唱力と折れない精神力の強固な土台となっています。