今作のジャンルは正統派のクライム・サスペンスに分類されるが、既存の型に収まるものではない。冷徹なまでのリアリズムと、詩的な映像美の融合。登場人物のわずかな視線の揺れや呼吸の乱れすらもサスペンスの要素へと昇華させるカメラワークは、まさに圧巻の一言だ。
撮影には特注のミリタリー仕様レンズと特殊な照明技術が使用され、影のグラデーションだけでキャラクターの複雑な感情を表現する実験的な試みがなされている。音響設計においても、無音の間(ま)を効果的に使うことで息をのむような緊迫感を作り出した。サスペンスファンにとって、これ以上ない極上の体験となることは疑いようがない。