サヘラントロプス・チャデンシスの発見は、教科書に描かれてきた人類の起源系統樹を大きく塗り替えました。他の有名な初期人類化石と比較すると、その位置づけがより明確になります。
エチオピアで発見された有名なアルディピテクス・ラミダス(約440万年前、通称アルディ)やオロリン・トゥゲネンシス(約600万年前)よりもさらに古い時代に属し、有名な「ルーシー」で知られるアウストラロピテクス・アファレンシス(約390万〜290万年前)と比べると、約300万年以上も昔の存在です。
また、従来の古人類学では「人類は大地溝帯(グレート・リフト・バレー)が走る東アフリカの乾燥化に伴って誕生した」とする「イーストサイドストーリー仮説」が広く信じられていました。しかし、サヘラントロプスがそこから2,500km以上も西に離れた中央アフリカ(チャド)で発見されたことにより、「初期人類はアフリカ中西部の森林・サバナ混在地域を含めた広大なエリアで多様に適応放散していた」という多元的な進化モデルへと定説が修正される契機となったのです。