『今ありて』の歌詞がこれほどまでに人々の心を打つ理由はどこにあるのでしょうか。その核心は、タイトルにも冠されている「今」という瞬間の肯定にあります。
阿久悠が紡いだ歌詞の冒頭、「草の芽 伸びて 萌えいづる」というフレーズは、冬の寒さに耐え忍び、春の光を浴びて芽吹く植物の力強い生命力を描写しています。これはまさに、厳しい冬の練習を乗り越えて甲子園の土を踏んだ球児たちの姿そのものです。
そしてサビに登場する象徴的な一節:
「今ありて 未来も扉を開く
今ありて 時代も連なり進む」
従来のスポーツ讃歌の多くは「勝利」「栄冠」「闘志」といった結果や奮闘を前面に押し出す傾向にありました。しかし、阿久悠作詞の『今ありて』は、勝者だけでなく敗者も含め、「いま、この場所に立っている尊さ」そのものを讃えています。過去の努力が「今」をつくり、その「今」を全力で生きることによってのみ、未知の未来の扉が開かれる――。この普遍的な人間讃歌のメッセージが、時代を超えてあらゆる世代の共感を呼ぶ理由です。