筋彫りを終えた後、何ヶ月も、あるいは何年も次の予約を入れない状態が続くと、施術を担当した彫師との関係性にも亀裂が入りかねません。スタジオ側が筋彫りの放置を嫌がる背景には、単なる営業上の都合だけではない技術的な理由が存在します。
まず挙げられるのが、経年変化によるインクの滲みと皮膚の変質です。施術期間が数年以上も空きすぎてしまうと、最初に入れた筋彫りのラインが皮下で徐々に馴染んで太くなり、後から入れるぼかしやカラーとの色味のバランスが崩れてしまいます。肌のコンディションも加齢や日焼けによって変化するため、本来彫師が描いていた理想のグラデーションを再現することが極めて困難になります。
さらに、彫師にとって顧客の身体に刻んだ作品は自身の看板でもあります。「あの筋彫り、誰のスタジオで彫ったの?」と周囲から見られた際、未完成の不格好な状態で街を歩かれることは、彫師自身の技術力やプロ意識に対する風評被害にも直結します。連絡を一切取らずに放置した挙句、数年後に何食わぬ顔で再開を申し入れたり、他店へ筋彫りだけの続きを頼み込んだりする行為は、アーティストへのリスペクトを欠くマナー違反として敬遠されるのが実情です。