この古典落語を世界的なアートへと飛躍させたのが、アニメーション作家・山村浩二監督による短編アニメーション映画『頭山』(英題:Mt. HEAD)です。
2002年に完成した本作は、制作期間に約6年もの歳月を費やし、鉛筆とマーカーで描かれた膨大な手描き原画(1万枚以上)をデジタルコンポジットする手法で制作されました。音楽と語りには、惜しまれつつ世を去った浪曲師・国本武春氏を起用。三味線の唸るようなリズムと現代的なロックテイストが融合した唯一無二の浪曲が、男の閉塞感と狂気を凄まじい迫力で描き出しました。
2003年、本作は世界のアニメーション界を揺るがす快挙を成し遂げます。世界最高峰とされる「アヌシー国際アニメーション映画祭」でグランプリ(クリスタル賞)を受賞したほか、「ザグレブ国際アニメーション映画祭」でもグランプリを獲得。さらに第75回米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされ、日本人監督の作品として歴史的なマイルストーンを打ち立てました。
また、本作は絵本文化にも波及しています。講談社の落語絵本シリーズをはじめ、子ども向けの絵本としても複数の作家によってビジュアル化されてきました。しかし、絵本を読んだ子どもたちからは「絵がリアルで怖い」「夜お風呂に入るのが怖くなった」といった声が寄せられるなど、ビジュアル化されたことで不条理の生々しさがよりダイレクトに伝わる結果となっています。