アガサ・クリスティー賞を全会一致で受賞してデビューを飾った逢坂冬馬の『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)が本屋大賞の頂点に立った瞬間、誰もがその圧倒的な作品世界に呑み込まれた。第二次世界大戦下の独ソ戦を舞台に、女性狙撃手たちの過酷な運命を描き切った本作は、単なる歴史小説の枠組みを遥かに超えている。
緻密な時代証言の検証と、疾走感あふれる語り口。新人のデビュー作とは思えぬ圧巻の筆力に、発売直後から全国の書店員が言葉を失った。生と死の狭間で揺れる少女たちの葛藤は、混迷を極める現代社会の空気感とも奇妙にシンクロし、世代を超えた社会現象へと発展していったのだ。