家系ラーメンの歴史と経緯を語る上で、すべての起点となるのが1974年に神奈川県横浜市磯子区新杉田で産声を上げた総本山 吉村家です。創業者の吉村実氏は、長距離トラック運転手を経てラーメンの世界へ飛び込み、「九州の豚骨スープと東京の醤油ダレを融合させたら旨いものができるのではないか」という着想から独自の味を開発しました。早朝から港湾労働者やドライバーたちの胃袋を支えるため、濃厚で塩分の利いたガツンとくる一杯を提供したことが爆発的な支持の契機となりました。
吉村氏の指導は徹底した現場主義と厳格さで知られ、修行を耐え抜いた弟子たちが「本牧家」や「六角家」などを開業し、屋号に「家」を冠していたことから、ファンによって「家系」という呼称が定着していきました。1990年代には「本牧家」「六角家」を中心に第一次ブームが到来し、横浜のご当地グルメとしてメディアで大きく報じられるようになります。
その後、2000年代初頭にかけて吉村家が直販免許・暖簾分けを厳格に管理する「吉村家直系」体制を確立する一方で、吉村家の血統とは異なるアプローチで独自の進化を遂げた「壱系(壱六家ルーツ)」や「武蔵家系」、さらに吉村家から独立した「王道家」などが台頭しました。2010年代以降は外食大手企業が参入し、工場でスープを一元製造する「資本系チェーン」が駅前や幹線道路沿いに進出。2026年現在の業界データによると、全国の店舗数は2,000店舗以上に達し、日本を代表する一大麺文化カテゴリーとしての地位を不動のものにしています。