ファンコミュニティを震撼させ続けてきた「にじさんじの卒業ラッシュ」という現象。ネット上では「運営との確執」「内部崩壊」といった過激な言説が独り歩きしがちですが、実態はより多層的で複雑なビジネス構造に起因しています。ANYCOLORが公開しているIR資料や決算説明会での言及、ならびにライバー本人が最後の配信で語った言葉を丹念に照合すると、離脱の要因は大きく3つの局面に分類されます。
第1の要因は、IPビジネスの高度化と活動自由度のトレードオフです。にじさんじは東証プライム市場への上場を果たして以降、コンプライアンス遵守体制を急速に強化しました。黎明期のような「何でもありの配信文化」から、案件企業への配慮やガイドラインの厳格化が進んだ結果、自身のクリエイティビティを制限されたと感じるトップライバーとの間に、埋めがたい溝が生じるケースが増加したのです。
第2に、肉体的・精神的なバーンアウト(燃え尽き症候群)が挙げられます。年々激しさを増すライブイベントのレッスン、長時間の配信スケジュール、ボイス収録、そしてSNS上の過度なバッシング。元所属ライバーが後のインタビューや手記で「カメラの前に立つこと自体に恐怖を覚えるようになった」と告白したように、トップを走り続けるプレッシャーは想像を絶するものがあります。
そして第3に、個人の収益性とブランド確立による「独立志向」です。にじさんじという巨大な看板のもとで知名度を獲得したタレントが、収益の分配比率や活動の制限を鑑み、「個人事業主として自立したほうが自身の望む創作ができる」と判断する動きが定着しました。卒業ラッシュの真相とは、組織の崩壊ではなく、クリエイターが自らの主権を取り戻そうとする業界の成熟期特有の独立連鎖なのです。