InstagramやPinterestなどSNSの普及により、近年急速に広がったのが「大人が手を加えすぎた美しすぎる作品」の氾濫です。ネット上で見かける端正な壁面構成を見て、「自分のクラスの子はこんなに綺麗に貼ってくれない」「色が混ざって茶色い塊になってしまった」と焦りを抱く保育士や保護者は少なくありません。
しかし、これは幼児発達の観点から見れば完全な本末転倒です。児童臨床心理の分野で指摘されるのが、「代理製作」による自己肯定感の棄損です。子どもが自由にスタンプを押した画用紙を、大人がハサミで花弁の形にトリミングしたり、目玉の位置を「正しい場所」に貼り直したりする行為は、無意識のうちに「あなたのあるがままの表現では不十分だ」という否定のメッセージを伝達してしまいます。
2歳児の作品において、あじさいが原形をとどめないほど色が混ざり合ったり、かたつむりの目が枠外に飛び出していたりすることこそが、その子が世界と向き合った真正な航跡です。大人の「美観」と子どもの「主体性」の間に明確なバウンダリー(境界線)を引き、偶発的な形や混沌とした色の重なりを「力強い雨の表現だね」と丸ごと肯定する視点こそが求められます。