もっとも警戒すべきは、消灯後の室内でベッドに横たわりながら行う暗闇でのスマホ操作です。このシチュエーションには、眼科医が警鐘を鳴らす解剖学的な危険因子が二重に重なっています。
人間の目は、暗い場所に身を置くと光をより多く取り込もうとして、自律神経の働きにより瞳孔を大きく開きます(散大)。瞳孔が開くと、茶目にあたる虹彩が外側に寄り集まり、根元の厚みが増します。その結果、眼球内を満たす液体(房水)が排出される通り道である「隅角(ぐうかく)」が狭くなり、房水の出口が塞がれてしまうのです。
さらにそこへ拍車をかけるのが、首を深く曲げて手元を覗き込むうつむき姿勢による眼圧変化です。頭部を下方に傾けた前傾姿勢を維持すると、頸部の静脈が圧迫されて頭部や眼球の血圧が上昇し、上強膜静脈圧の上昇を介して眼圧が2〜5mmHg程度跳ね上がることが臨床実験で確認されています。
健康な成人であれば一時的な眼圧変動は自然に元へ戻ります。しかし、もともと隅角が狭い構造を持つ「浅前房」の人(特に遠視の高齢者や小柄な女性)が暗闇でうつむきスマホを続けると、隅角が完全に閉塞し、房水の逃げ場がなくなって眼圧が急上昇する急性緑内障発作の前兆を招く危険があります。眼圧が通常の倍以上(40〜60mmHg以上)に達すると、視神経が急激に圧迫され、数日放置するだけで永久的な視力喪失につながりかねません。