「教科書の通りに実験を進めても、子どもたちから『先生、次は何をやればいいの?』と指示待ちの声しか返ってこない」。都内の公立小学校で5年生の担任を務める教員は、日々の理科授業での苦悩をこう吐露します。この告白は決して孤立した事例ではありません。学習指導要領改訂の経緯と現在をたどると、平成29(2017)年告示の改訂において、理科は「自然の事物・現象に進んで関わり、見通しをもって追究する」能動的な学びへの大転換を明確に打ち出しました。しかし、指導書のモデルプランをなぞるだけの授業では、子どもたちの探究心に火がつかないという壁に多くの現場が直面しています。
文部科学省小学校理科の教科目標において、最も重視されているのが「理科の見方・考え方」を働かせた「問題解決の能力の育成」です。見方・考え方とは、自然事象を「質的・関係的(3年)」「量的・関係的(4年)」「質的・実体的(5年)」「量的・関係的・巨視的(6年)」といった視点で捉え直す思考の枠組みを指します。文部科学省が実施した全国学力・学習状況調査の分析結果を見ても、観察・実験の結果から規則性を読み取ったり、新たな条件を設定して仮説を再構築したりする問題において、全国平均正答率が依然として50〜60%台にとどまる傾向が報告されており、「思考・表現の深まり」に課題があることは客観的なデータからも明らかです。
現場が直面している最大の変化は、知識を「覚えたか」を問うテスト中心の指導から、子どもが「自ら問いを立て、解決の道筋を考え抜いたか」を評価する授業スタイルへのシフトです。教科書の問いをそのまま黒板に板書するのではなく、導入の提示物(導入事象)に対して子どもたちから自然と「なぜだろう?」「こうすれば確かめられるのではないか」というつぶやきを引き出す仕掛けが、いまあらゆる授業改善の起点として求められています。